強化ガラスは、ガラスに対して熱処理を行い、ガラスの強度を高めたガラスです。ガラスの強度を高めるというのは、一般的に「割れにくい」という特長を持たせるということです。強化ガラスは、例えば、商業施設やオフィスなどで使用されます。

ここでは、強化ガラスについて、解説します。

強化ガラスとは?厚みや使用されるシーンを見てみよう!

ガラスはなぜ割れるのか

ガラスに対して働く力と、その結果、ガラス自体にかかる力は、どのような関係でしょうか。ガラスの面に対して力が働くと面がたわみます。力が働いたガラス面には、面が押し込まれますので、面の表面に「圧縮」の力が働きます。同時に、その面の反対側のガラス面には、面が広がるように「引張り」の力が働きます。ガラスの特徴として、ガラスは「圧縮」の力には強く「引張り」に弱いので、この場合は、「引張り」の力の働くガラスの裏面が、力が加えられている面より、たいへん弱い。

具体的に考えましょう。例えば、ガラスが棚の板として使われる場合を考えます。このガラスの上に、花瓶などの重量物を乗せると、その花瓶が重ければ重いほど、ガラスは下方にたわんでいきます。このガラスがたわんだときに、花瓶が乗っているガラス面には「圧縮」の力が働き、そのガラスの裏面には「引張り」の力が働きます。「引張り」の力に弱いガラスは、「引張り」の力がかかっているガラスの裏面から割れるのです。

もちろん、ガラスの板を押し込んでたわんだときに、すぐ、ガラスが割れるわけではありません。限界点までガラスの板を押し込んでたわんだときに、ガラスは割れてしまうのです。

強化ガラスの原理

「ガラスがなぜ割れるのか」、それはガラスが「引張り」の力に負けるからです。ですから、ガラスの面に「引張り」の力が働いても、これに対抗して「引張り」の力をプラスマイナスゼロにしていまうような力がガラスの内部にあればよい。その力をガラス内部に作り蓄えよう。それが強化ガラスの原理です。そのようにすれば、ガラスは一段と割れにくくなります。

強化ガラスの作り方

まず、フロートガラスを650℃程度にまで熱します。それから、650℃程度に熱されたガラス面に常温の空気を均一に吹き付けて、ガラスを急冷させます。そして、この熱せられ急冷されたガラスをそのまま置いておきます。強化加工の作業としては、これだけです。

空気による急冷により、ガラスの表面がガラスの内部より先に固まります。内部より先に固まったガラスの表面には「圧縮応力層」が形成されて「圧縮」の力を持ちます。表面よりゆっくりと冷えたガラス内部には、表面の「圧縮」の力にバランスして、「引張り」の力を持ちます。

こうしてできあがったガラスの表面の「圧縮応力層」は、ガラスのたわんだ面の裏面の「引張り」の力に対抗する力となります。つまり、たわんだ面の裏側は引っ張られて広がっていくのですが、その表面のすぐ内部の層にある「圧縮応力層」の「圧縮」の力が「引張り」の力にバランスして、ガラスは割れにくくなります。この結果、強化ガラスは、フロートガラスの3~5倍程度の強度を持つことになります。

強化ガラスの見た目

「圧縮」や「引張り」といった力が内蔵された強化ガラスは、その「力」自体が見えませんから、それを備えたところで、見た目がフロートガラスと変わることはありません。しかし、気を付けてよく見ると、表面に歪みが見えます。強化処理をしていないフロートガラスと比べれば、さらにはっきりとわかります。この歪みは、特に反射映像において、はっきりとわかります。

この歪みは、「力」とは関係のないところで発生します。その歪みは、平面強化炉でのロールの上を転がって移動する「強化加工中」の「軟らかいガラス」に刻み込まれる跡なのです。例えば、極端に考えて、強化炉のロールの上で、ガラスが停止したときを想像しましょう。650℃程度に熱せられたガラスはもちろん「軟らかく」なり、ロールの隙間から融けて落ちていきます。もちろん、流れ落ちるほどではないにせよ、平面のガラスは凸凹になります。これが、歪みの正体です。実際は、強化炉でこのようなことは発生しません。なぜなら、強化炉のロールの上でガラスが停止することはなく、熱せられながら、ロールの上をころころと転がっていくためです。ということであれば、できるだけ早く強化炉を通過することができれば、理論上は、歪みが少ない強化ガラスがつくれるはずです。この原理から、強化ガラスの歪みは避けられませんが、その程度を良くすることはできます。

強化ガラスの割れ方と「安全ガラス」

強化加工されていないフロートガラスは、ナイフの刃(エッジ)とよばれるように、刃物のように鋭利な形に割れます。これに対して、強化ガラスは粒状に割れます。ナイフエッジになることはありません。粒状になるので、ナイフエッジとは違い怪我をしにくいのです。この意味で、強化ガラスを「安全ガラス」ということがあります。

ガラスの破片が、中間膜に張り付いて飛び散ることのない「合わせガラス」も「安全ガラス」と呼ばれます。両者は同じ「安全ガラス」であっても、強化ガラスはガラス破片で怪我をすることがないので「安全」、合わせガラスは怪我の原因であるガラス破片自体が飛び散らないので「安全」なので、同じ「安全ガラス」であっても、その「安全」の内容が違います。

また、強化ガラスの作り方は上述の通りですが、その結果として出来上がった強化ガラスが、日本工業規格(JIS)の定義にしたがって「強化ガラス」と認定されるためには、一定の「細かさ」をもつ粒状のガラス破片でなければなりません。そのような割れ方をしない限り、JISの「強化ガラス」とは認められませんので、「安全ガラス」としても認められませんが、これは、ガラスの仕様の話です。効果として、粒状に割れることで怪我をしにくいのは、事実で、この意味で「安全ガラス」であることには、変わりありません。

強化ガラスの厚み

日本工業規格によれば、 フロートガラスは2mmから25mmまで14種の厚みが認められています。強化ガラスは、フロートガラスを強化加工することが基本ですから、フロートガラスの厚みで、生産することが可能です。25mmより厚い強化ガラスが必要な場合には、強化ガラス同士の合わせガラスにします。

強化ガラスの利用シーン

強化ガラスの強度と安全という特長をを生かして利用するシーンの一つが、オフィスビルのカーテンウォールです。耐風圧計算をして、必要なガラス強度が算出されたとき、強化ガラスであれば、ガラス厚みを薄くすることができます。例えば、強化をしていないフロートガラスであれば、8mm厚のガラスの強度が必要なところでも、強化ガラスであれば、6mmのガラスの強度で済むかもしれません(耐風圧計算によります)。最大のメリットは、ガラスの重量が軽くなることです。

また、強化ガラスはフロートガラスよりも安全性が高いので、オフィスや自宅に使用されるテーブルトップや棚板などしても使用されます。万が一割れたとしても粒状となり、ガラスエッジのような鋭利で危険な部分がない「安全ガラス」だからです。しかし、ガラス片は飛散するので、飛散を防止する「フィルム」を使うことが一般的です。

機械のメーター部分のガラスとしての使用は前者の点で、ドアやラックなどとしての使用は後者に点で、使われます。

強化ガラスの豆知識

強化ガラスの孔開けは、強化加工をする前のフロートガラスの時にします。強化ガラスに孔は開けられません。もし、ドリルで強化ガラスに孔をあけようとすると、表面にある圧縮応力層を破壊することになりますので、強化ガラスは自爆します。

強化ガラスの見分け方

強化ガラスは表面に圧縮応力層ができていますので、太陽光などが当たると光が屈折します。偏光板を使うと光の屈折を見ることができるので、強化をしていないフロートガラスと強化ガラスを見分けることができます。天気の良い日に強化ガラスを太陽光に当てます。偏光板でガラスの四隅を見て虹色になっていれば強化ガラスです。厚みのある強化ガラスほど光が屈折しやすいために虹色がはっきり出て見分けやすいです。

防犯ガラスとの違い

防犯ガラスも強化ガラスを使っていますが、通常の防犯ガラスは、強化ガラスを二枚合わせて中間膜を挟んで圧着していますから、強化ガラスよりも、より割れにくく、より安全になっています。

フロートガラスよりも強度を高めた強化ガラスは、その圧縮応力層を傷つけることで、自爆します。例えば、自動車の脱出用ハンマーなどを使うと簡単に自爆します。これに対して防犯ガラスは、破壊しても中に挟んである中間膜がガラスを保持しているために、ハンマーなどでガラスを叩いても、その面の強化ガラスは自爆しますが、中間膜は破損せず、反対側の強化ガラスはなかなか割れません。
バールのようなものでこじ開けるときにも割れにくいです。衝撃に強く強い力を与えても一部しか破壊されません。

まとめ

強化ガラスは、フロートガラスを熱してから急激に冷やして、ガラスの表面に圧縮応力層を形成することで、割れにくくしています。厚みにはフロートガラスに合わせて14種類ありますが、より厚い強化ガラスを使うなら強化ガラスを合わせて合わせガラスにします。

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