製品の機能性UP、および、製品の機能性の長期保持を主目的として、いろいろな製品にコーティングをします。
「蒸着」と「スパッタリング」
多くのコーティング技術がありますが、なかでも「蒸着」と「スパッタリング」は代表的なコーティング技術です。
しかし、「蒸着」と「スパッタリング」は違います。では、何が違っているのでしょう?「蒸着」と「スパッタリング」の仕組みから、その違いを比較したいと思います。
「蒸着」と「スパッタリング」の概要、原理や仕組み
①蒸着とは
蒸着とは、真空中で物質を蒸発(気化)させて、その蒸発(気化)した物質(蒸着材料)が、緩やかに対象物(基盤)に積もることで、成膜する方法をいいます。イメージとしては、水(物質)が蒸発(気化)して雨雲をつくり、そこから雨/雪(物質)が降り、地上に降る/積もる現象です。蒸着はスパッタリングより以前から、実用化されていました。
蒸着の手順は、次の通りです。
1)原料物質(蒸着材料)と成膜する対象物(基板)を容器(チャンバー)内に設置する
2)チャンバー内を真空にする
3)蒸着材料を加熱して蒸発(気化)させる。
4)気化した蒸着材料が、基板に付着し膜を形成する
②スパッタリングとは
スパッタリングの本来の意味は、物理学的には、イオン、原子、クラスターを物質表面にぶつけて表面物質を跳ね飛ばすことをいいます。イメージとしては、小石を砂地にたたきつけたとき、その部分の砂粒が弾け飛ぶ、といったものです。すなわち、陽イオン(例えば、Ar+(アルゴンイオン))が高速でターゲットに衝突し、ターゲットを構成している粒子がはじかれて放出される「現象」をいいます。コーティングにおけるスパッタリング法は、この現象を利用し、はじかれて放出されたターゲットの粒子を製品の表面に一定の並びに積もらせて、成膜する方法です。
スパッタリングの手順は、次の通りです。
1)原料(ターゲット)と膜をつける対象物(基板)を容器(チャンバー)内に設置する
2)チャンバー内を真空にして、不活性ガス(アルゴン(Ar)ガス)を導入する
3)基板とターゲット間に高電圧を加える。 4)高電圧で、電子・陽イオン(Ar+(アルゴンイオン))が高速移動する。 5)陽イオンがターゲットに衝突するとスパッタリング現象が発生し、ターゲット粒子をはね飛ばす。 6)基板に粒子が付着、薄膜が形成される
「蒸着」と「スパッタリング」のメリット・デメリット
①蒸着のメリット・デメリット
メリット
・早く成膜できる ・装置構造がシンプル ・装置が安価 ・膜厚のコントロールが容易 ・膜厚が調整し易い ・純度の高い成膜が行える ・常温に近い温度で加工できる ・対象物の損傷が少ない
デメリット
・付着力が比較的弱い傾向 ・大面積には向かない
②スパッタリングのメリット・デメリット
メリット
・付着力が強い ・合金系や化合物などの原料の組成比が変化しない ・高融点の原料でもコーティングが可能 ・時間により膜厚のコントロールが可能 ・大面積でも均一な膜作成が可能
デメリット
・凹凸のある対象物は向かない ・成膜速度が遅く、時間がかかる ・プラズマにより対象物に影響が出る場合があり、製品を損傷するリスクがある ・スパッタ用電源が高額で、真空チャンバー内は定期的なメンテナンスが必要なので、コストが高い傾向 ・材料によりコーティングできない
まとめ
「蒸着」と「スパッタリング」は、コーティングの代表的な手法です。それぞれに特徴がありメリットとデメリットもあります。一般的には蒸着の方がシンプルな原理でリスクも少なく、汎用性が高いためさまざまな分野に幅広く使われています。
以上