ガラスは「大きな衝撃を受けていないのに突然割れる」という現象が起こることがあります。
これは「熱割れ」という物理現象の一種で、特定のガラスに起こるものではなく、ガラスに熱が発生することで起こります。
ここでは、ガラスの熱割れについて詳しく説明していきます。
ガラスの熱割れ現象とは?
ガラスの熱割れとは、日光が当たる部分が膨張し、当たらない部分は膨張しないことで、部分的に温度差が生じガラスが割れてしまう現象です。
普通、ガラスが割れるのは重量のある物体がぶつかったり、大地震などで強い衝撃が加わったりすることで起こります。
しかし、熱割れは衝撃とほとんど関係がありません。
外からの力ではなく、内部で高温になったガラスが膨張することが主な原因です。
他の冷えている部分が膨張したガラスを拘束したり、熱によってガラス内のワイヤーが伸び、エッジの強度を超える引張応力が発生したりするため、ガラスが破損してしまうのです。
これは物理現象となるため、完全に防ぐことは難しいとされています。
熱割れは、衝撃が加わった時の割れ方とは異なります。
ガラスに衝撃が加わった場合、その部分を中心に放射線状にヒビが入る割れ方をします。
一方、熱割れの場合、ガラスの端から直角にヒビが入り蛇行しながら伸びていき、1本もしくは2本以上に枝分かれをするという割れ方になるのが特徴です。
ガラスの熱割れが発生する原因
ガラスの熱割れは、「高温部と低温部の温度差が著しい」「エッジ強度が低下し、ワイヤーの伸びに耐えられない」などが直接的な原因となります。
しかし、間接的にこれらの原因を引き起こすことで熱割れが起こるので、間接的原因もしっかり把握しておきましょう。
クーラーの室外機の熱風で生じる温度差
意外にも、熱割れの原因となるのがクーラーの室外機です。
室外機からは熱風が出るため、この熱風がガラスにあたることで温められ、ガラスの内部が膨張してヒビが入ってしまうのです。
遮光カーテンによる熱溜まり
遮光カーテンも熱溜まりを引き起こすため、熱割れが発生することがあります。
事例は少ないものの、遮光カーテンによってカーテンとガラスの間に熱が溜まってしまうため、内部の温度上昇への影響があると考えられています。
特に近年は異常気象が多く、夏には最高気温をマークすることも増えているので、遮光カーテンでも注意が必要です。
フィルムの設置により熱がこもる
遮熱フィルムや結露防止フィルム、飛散防止フィルムなど、窓にフィルムを設置していると熱割れが起こりやすくなります。
室内を、安全もしくは快適な状態にするために、いろいろなフィルムが販売されていますが、どんなフィルムであっても当然ですが通気性はありません。
通気性がないということは、太陽の熱が放出できず、ガラスの内部に溜まってしまいます。
内部に溜まった熱は、ワイヤーの伸びを引き起こすため、熱割れしやすくなるのです
ダンボールで放熱効率が下がる
窓際にダンボールを積んでいる場合、ガラスの放熱効率が下がることで熱割れが起こります。
ガラスが高温になっても、常に放熱ができれば温度の上昇を防ぐことができます。
しかし、ダンボールが積み重なっていると、放熱をしても窓とダンボールの間に熱が溜まっていきます。
そのため、ダンボールを置いていないところとの温度差が大きくなることで、ガラスにヒビが入ってしまうのです。
経年劣化によるワイヤーの伸び
ガラスにも耐用年数があるため、経年劣化によって熱割れをすることがあります。
ガラスの強度というのは、10~15年ほど経つと弱まってしまいます。そのため、経年劣化によって伸びたワイヤーに耐えられなくなり、突然ヒビが入ってしまうのです。
ガラスの熱割れの対策法
ガラスの熱割れは物理現象なので、残念ながら絶対に割れないようにする方法はありません。
しかし、対策を行なうことでガラスが割れるリスクを軽減することは可能なので、できることを実践していきましょう。
熱割れしにくいガラスを選ぶ
もっともシンプルな対策法は、熱割れしにくいガラスを選ぶことです。
熱割れしやすいガラスは、ペアガラスや熱線吸収ガラス、網入りガラスなどが挙げられるので、それ以外のガラスにするのがベストです。
もっとも割れにくいガラスは、熱に強い耐熱強化ガラスになります。
ただし、耐熱強化ガラスは高額なので、費用を抑えたい場合は、温度差が出づらい厚さ10mm以下の薄いガラスにするのもいいでしょう。
ガラスの放熱を妨げるものを置かない
熱割れを防ぐには、ガラスの放熱を妨げるものを置かないのが基本です。
ダンボールや家具、ブラインド、遮光カーテンなどガラスに熱がこもってしまうものは置かない、密着させないようにしましょう。
どうしても置かなければいけない、という時は、こまめに窓を開けて熱がこもらないようにしてください。
フィルムを貼らない
フィルムは、できる限り貼らないようにしましょう。
フィルムの機能によっては、普通の状態よりもガラス内部の熱が高くなってしまうことがあります。
紫外線や遮熱はレースのカーテンで調整する、飛沫防止フィルムは台風の時だけ貼るというようにすれば高熱になるのを防げます。
フィルムを貼らずに済む工夫をしてみましょう。
ガラスの熱割れはすぐに対処すること
ガラスの熱割れは、衝撃で割れた状態と異なり、すぐに全面的に割れるということはありません。
しかし、放置をしてしまうとヒビがさらに伸びたり、開け閉めしただけで破損したりする可能性があります。
いくら内部にできたヒビでも危険なことには変わりないので、放置をせずにすぐに修理・交換をしてください。