キルンワークとは?

ガラス工芸で使用される技法にキルンワークというものがあります。
ガラス作家の方が作品を作る時に用いる技法で、日本のみならず海外でも注目されています。
キルンワークで作られたガラス作品は、カラフルで個性豊かなものばかりです。

今回は、キルンワークとは何か、キルンワークの種類、キルンワークで作れる作品などについてご紹介します。

キルンワークとはどんな技法?種類や作れるガラス作品を解説

キルンワークとはどんな技法のこと?

キルンは「電気窯(電気炉)」を意味します。キルンワークとは、電気窯を使ってガラスを溶かしたり変形させたりし、形を整え、顔料を焼き付けて製作するガラスアートのことです。

板ガラスや棒バラス、パウダーなどさまざまな素材が使用されます。

キルンワークでは、主に最高温度が800℃程度の徐冷窯が用いられます。
ガラスを徐冷することで、高温で成形したガラスをゆっくりと冷やし、強度を安定させることができます。
ガラスは急激に冷やされると歪みやすいため、徐冷窯を必要とするのです。

キルンワークの種類やそれぞれの特徴は?

キルンワークは、成形する技法によりいくつかの種類に分けられます。ここでは、キルンワークの種類やそれぞれの特徴を解説します。

ガラスフュージング

フュージングの語源は英語の「fusion」、日本語で「融合」を意味します。
電気窯で板ガラスや棒ガラスを溶かし、専用の糊で貼り付けて加熱し、お皿やアクセサリー、フォトフレームなどを作る技法のことです。
絵画のように自由にデザインできるのが最大の魅力です。

必要な道具

フュージング用ガラス、フュージング糊、ガラスカッター、高温用絵付けエナメル、セラシート(離型紙)、グラスファイバー、ダイクロガラス、金箔など

パート・ド・ヴェール

パート・ド・ヴェールは、フランス語で「ガラスの練り粉」を意味します。
耐火石膏で作った型の中に、粉末状のガラスを詰め、加熱する技法です。

歴史は古く、紀元前の古代メソポタミア時代の「鋳造ガラス」が起源といわれており、アールヌーボーの流行により高級美術品として認知されるようになりました。
別名「ガラスキャスティング」とも呼ばれており、従来のガラスの「無色透明」「硬い」といったイメージではなく、柔らかさが強調されているのが特徴的です。

陶芸のような感覚で作品作りができるため、子どもや初心者にも向いています。

必要な道具

ガラス粉、油粘土(またはワックスで作った型)、耐火石膏、電動研磨機、ニス

スランピング

スランピングは、パート・ド・ヴェール同様、耐火石膏で型を作り、板ガラスを乗せて窯で加熱し、変形させる技法です。
スランピングの語源は英語の「slump」、日本語で「落ちる」を意味します。

文字通り、加熱によりガラスが重みで下に落ち、型に沿って曲がっていくという流れで出来上がります。

必要な道具

モールド(型)、耐火石膏、油粘土

コールドワーク

コールドワークとは、窯で焼いた後に徐冷したガラスを加工する技法のことです。
熱を使わず、ガラスを切る・穴を開ける・研磨する・装飾するなどの工程で作品を仕上げます。

コールドワークには、ガラスを切る「カットグラス」や砂を吹き付けて削る「サンドブラスト」、ガラスを組み合わせる「ステンドグラス」などの種類があります。

必要な道具

ガラス切断機、ガラス研磨機材、ベルトグラインダー、ダイヤモンドホイール、サンドブラスト装置、小型電動工具(ハンドグラインダーなど)

エナメル絵付け

ガラスの表面を顔料で色付けし、窯で加熱して焼き付ける技法です。
エナメル絵付けの顔料には、エナメル絵具の他に線を描くためのグリザイユ、黄色やオレンジの色付けをするシルバーステインなどがあります。

必要な道具

エナメル絵具、エナメル絵具用溶き油、筆(使用する色の数)

キルンワークで作れるガラス作品とは?

技法に種類があるように、キルンワークではさまざまなガラス作品を制作できます。
ここでは、その一例をご紹介します。

ガラスフュージング

お皿、アクセサリー(ペンダントやイヤリングなど)、フォトフレーム、時計、箸置き

パート・ド・ヴェール

お椀、湯飲み、お皿、プレート、花瓶、アクセサリー(お菓子のブローチなど)

スランピング

お皿、プレート、ランプシェード

コールドワーク

キャンドルホルダー、サンキャッチャー、ステンドグラス

エナメル絵付け

アクセサリー(ブローチ、ヘアゴム、ペンダントなど)、パウダーケース、キーホルダー、ボタン

上記以外にも作り手のアイデア次第でどんな作品も制作できます。

まとめ

今回は、キルンワークの技法や種類、作れるガラス作品についてご説明しました。
キルンワークは、芸術作品を作る技法としても、建築家やデザイナーからも注目されています。

今後は、建築やインテリア家具にも取り入れられていく可能性があるでしょう。
電気窯さえあれば誰でも始められるため、興味のある方は作品作りに挑んでみてはいかがでしょうか。

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