熱線吸収ガラスとは?

ガラスにはいくつも種類があり、そのうちの一つが熱線吸収ガラスです。太陽からの熱を吸収する働きがあり、オフィスビルのカーテンウォール部で窓ガラスとして使用されます。

ここでは、熱線吸収ガラスはなぜ熱を吸収するのか、そしてどんなメリットや注意点があるのかご紹介します。

熱線吸収ガラスはどんなガラス?冷暖房効果を高める役割がある

熱線吸収ガラスとは?

熱線吸収ガラスとは、ビルなどの建築物について、その建築物の断熱効果、結露防止などを追求した機能ガラスのなかで、特に、ガラスの原料自体に少量の金属(鉄・ニッケル・コバルトなど)を添加して着色したガラスのことを言います。ガラス自体にグレーやブロンズ、グリーンなど色付けをしています。透明なガラスとは明らかに意匠の異なった色付きガラスです。

熱線吸収ガラスが熱を吸収する

ガラス面に入射してきた太陽光(=日射熱量)全体が、ガラスを透過する際に、着色されたガラスに吸収されます。ガラスを着色した色にもよりますが、太陽光のおよそ30~40%が着色ガラスに吸収されるので、熱線吸収ガラスと呼ばれます。端的に、室内に入る太陽光の熱を減らすことができますが、ガラス自体が熱を吸収するためにガラス自体から発せられる熱が5%~程度あります。

ガラス自体が熱を吸収するために、理論的には透明であるガラスよりも熱で割れやすいと考えられますが、これは、そのガラスを設置する部位、ガラスの大きさ・厚みなどのデータに基づいた熱割れ計算により、あらかじめ回避することができますから、ほとんど心配はありません。熱で温まった熱線吸収ガラスに、エアコンの冷たい風が当たり割れるケースは散見されますので、エアコンの位置とガラスの関係には、注意が必要です。ガラスの厚みが増すほど、吸収する太陽光が多くなり、熱線吸収効率が上がります。

熱線吸収ガラスの使用場所

主にオフィスビルなどで使われます。室内に入る太陽光を抑えて、特に冷房効果を高めたい場所で使うのに適したガラスです。また、サンルームのような場所のガラスとしても使用できます。つまり、室内に入る熱を抑えたい場所であれば、一般的な住宅でも十分使えます。

普通のガラスと同じように、経年劣化することはほとんどないので末永く使用できます。割れたり傷がついたりしなければ、何年も使用できるでしょう。

熱線反射ガラスとの違い

室内に入る太陽光を抑えるガラスには、熱線吸収ガラスの他に「熱線反射ガラス」があります。「熱線反射ガラス」は、ガラス表面に金属を焼き付けており、金属の膜によって太陽光を跳ね返します。板状のガラスにオンラインコーティングやオフラインコーティング(スパッタリング)といった金属膜コーティングをします。熱線反射ガラスの表面が金属膜で覆われているために、ミラーのような外観です。マジックミラーのような室内のプライバシーを守る役割もあります。

「熱線反射ガラス」は鏡のように光を反射し、ガラス自体に着色されているわけではなく、ガラス自体が太陽光を吸収するような仕組みとなっていないので、ガラスが極端に熱を持つことはありません。しかし、熱線反射ガラスで反射した太陽光は、他の建物や地面に当たり、これがクレームとなりことがあります。熱線吸収ガラスは熱を吸収し、熱線反射ガラスは熱を反射して、室内に入る熱を抑えます。

熱線吸収ガラスの加工

普通のガラスに色をつけているので、ガラスカッターを使用してカットできます。購入前に業者でカットしてもらうこともできます。傷を目印に折る感じです。また、普通のガラスに色をつけているだけであるために、穴開け加工もできます。

熱線吸収ガラスの強化加工も可能です。通常の強化ガラスと同じように、熱線吸収ガラスを熱してから急激に冷やして強度を高めます。窓ガラスに強化した熱線吸収ガラスを使用すれば割れにくくなり、割れても粉々で鋭利にはならないので怪我しにくい「安全ガラス」です。

熱線吸収ガラスは曲げ加工もできます。ガラスを600度程度で熱して軟化させて、重みで自然曲げます。冷やして固めて、曲げ加工の完成です。カーブのかかった壁などで曲げ加工したガラスを使用できます。

熱線吸収ガラス使用時の注意点

熱線吸収ガラスは太陽光の熱を吸収しガラス自体が熱を持つので、部屋用の窓として使うならば設置したガラス周辺の環境を考えないといけません。ガラスを急激に冷やすような環境にしないようにしましょう。

エアコンの風がガラスに当たるような環境にすると、ガラスの一部のみ冷やされ、熱を持った部分と冷えた部分との温度差により割れます。ガラスが厚くなるほど熱を吸収するので、ガラスの温度差に注意しましょう。

また、熱線吸収ガラスの前に家具や厚手のカーテンを置くと、ガラスは熱い部分と冷たい部分ができて割れる可能性があります。ガラスに紙を貼ったりペンキを塗ったりする行為も、温度差で割れやすいです。

まとめ

熱線吸収ガラスはガラスに鉄粉などの金属の粉を混ぜて色をつけているために、光を遮り太陽光の熱を吸収します。窓ガラスに使われるガラスであり、室内に入る熱を減らし冷房効率を上る効果があります。ガラス厚みは、厚くなるほど熱吸収効率が高いです。

窓ガラスとして使用するときは室内の家具や家電の設置場所を考え、ガラスの一部だけ冷やされると熱を持った場所との温度差で割れます。熱線吸収ガラスは強化加工して割れにくくすることもできます。

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