寒い季節が訪れると、窓や壁の結露が気になりませんか?
結露を放置しておくと、カビの発生や床材の腐敗など、トラブルの元になります。
結露には、窓と外気温が関わっています。
とくに窓ガラスの「熱貫流率」は、結露の発生との関わりが深いので、基礎知識として知っておきたいですね。
今回は、窓ガラスの「熱貫流率」について、結露との関係を含めて詳しく解説します。
熱貫流率とは?
熱貫流率(ねつかんりゅうりつ)とは、物質の熱の伝わりやすさ、断熱性能の高さを表す数値です。
窓ガラスの外側と内側の温度差が1℃だった場合、1時間あたりに1平方メートルを通過した熱量のことを表します。
建築関係には欠かせない用語で、K値と呼ばれていましたが、平成21年4月1に省エネ法が改正してから「U値」に変わりました。
日本ではK値と呼ばれていましたが、世界ではU値が使われていることから、熱貫流率の記号を統一するために変更したのが背景です。
熱貫流率は住宅の部材ごとに求める
住宅の壁は1枚ではなく、何枚もの部材を構成して建築します。
1.外壁材(サイディング)
2.外壁下地(合板)
3.断熱材(グラスウールやスロックウールなど)
4.柱(間柱)
5.内壁下地材(石膏ボード)
熱貫流率は壁に限らず、住宅を構造する床や屋根、窓などの部材ごとに比較するため、熱がどれだけ外部から流入出したかがわかります。
熱貫流率の計算方法は?
熱貫流率は、壁を作る複数の部材の他、壁の外側と内側の表面に接した空気層も含めて、1つずつ熱抵抗値や熱伝導率を求めます。
合計した数値の逆数を取って求めるのが、熱貫流率なのです。
熱貫流率を求めるには、次の7つの調査と計算が必要です。
1.部材の熱伝導率(λ値)を知る
2.部材の厚さ(m)を知る
3.空気層の熱抵抗(㎡・K/W)を知る
4.外気側表面の熱伝達抵抗を知る
5.内側表面の熱伝達抵抗を知る
6.熱抵抗(R値)を部材別に計算する
7.熱抵抗の合計を計算する
熱伝導率とは、物質の熱の伝わりやすさを言い、熱貫流率とは意味が少し違います。
熱伝導率 | ・熱が物質を伝わる量
・単位は「W/(m ・K)」、ワット毎メートル毎ケルビン |
熱貫流率 | ・熱が物質を通過する熱量
・単位は「W/(㎡ ・K)」、ワット毎平方メートル毎ケルビン |
熱貫流率は、部材の熱伝導率を把握しておかないと計算できないため、2つは深く関係しています。
熱貫流率の計算式
熱貫流率の計算式は、次の3つの方法で求めます。
1.熱抵抗の計算 | 物質の厚さ÷熱伝導率 |
2.熱抵抗の合計 | 外気側表面熱伝達抵抗+空気層の熱抵抗+内側表面熱伝達抵抗 |
3.熱貫流率の計算 | 1÷熱抵抗の合計 |
もし、断熱材が「発泡ウレタン吹き付け」や「木材熱橋」など、充填断熱の住宅の場合は、熱貫流率の平均値を計算しなくてはいけません。
1.断熱材の熱貫流率を計算
2.木部の熱貫流率を計算
3.面積比率方で平均熱貫流率を計算
「面積比率法」とは、断熱材や柱・梁などの面積比率を平均して求める方法です。
柱1本ずつ求めなくても良いため、計算式の数が減ります。
熱貫流率から見る!断熱効果の高い窓ガラスは?
暑い日にエアコンの温度が一定でも室温が上がらない住宅、冬は窓からのひんやりとした空気を感じない家など、快適性を求めて断熱性の高い窓ガラスにリフォームする家庭が増えています。
年々、窓ガラスの機能性もアップしているので、リフォーム会社でも「断熱性の高い窓」を紹介しています。
断熱性能に優れた窓と言えば「複層ガラス」です。
複層ガラスは2枚のガラスの間に乾燥空気が含まれているため、1枚ガラスの一般窓に比べて熱流入の低さが特徴的です。
「複層ガラスは結露しにくい」とイメージが強いのですが、同じ複層ガラスでも機能性が違うため、熱貫流率も変わってきます。
結露予防の窓ガラスを求めるなら、熱貫流率をしっかり把握しておくことが大切です。
複層ガラスの中で、熱貫流率が低い種類をチェックしていきましょう。
複層ガラスの種類 | 空気層の厚さ | 熱貫流率 |
一般的タイプ | 6mm | 3.4 |
高断熱タイプ
(乾燥空気) |
6mm | 2.7 |
遮熱高断熱タイプ
(乾燥空気) |
6mm | 2.5 |
高断熱タイプ
(アルゴンガス) |
6mm | 2.3 |
遮熱高断熱タイプ
(アルゴンガス) |
6mm | 2.1 |
※窓ガラスはすべて3mmタイプ
複層ガラスの中間層は乾燥空気の他、アルゴンガス仕様もあります。
空気層の種類や空気層の厚さが広いほど、熱貫流率が低いため、結露しにくい窓ガラスと言えるでしょう。
窓ガラスのリフォーム交換を希望するときは、業者に「熱貫流率が低い窓はどれですか」と質問すると、結露やカビ予防に強い窓ガラスを紹介してくれるでしょう。
まとめ|熱貫流率の低い窓ガラスを選ぼう
熱貫流率の計算は、住宅の部材や材料の熱伝導率などを知っておく必要があるため、数値を求めるまで手間がかかります。
しかし数値を知ることで結露しやすい住宅なのか、判断材料の1つになることは間違いありません。
住宅のリフォームを検討している人は、熱貫流率についてしっかり覚えておきましょう。